医学の進歩は目覚ましいものがあり、それに伴って医療は細分化が進みました。医師の多くは専門領域に特化して診療することによって、さらなる医療の進歩に貢献しています。
そして、昨今の健康志向の高まりからか、毎日のように医療関連の番組やニュースで専門領域の特殊技能を持つ医師の活躍が取り上げられ、賞賛されています
しかし一方では、医療が細分化すればするほど、一部に弊害が生じていることも事実です。患者さんが医療機関をはじめて受診する時は、まだ自分が何の病気にかかったのかが不明なことがほとんどなので、どの科にかかってよいのかがわからず困ってしまうようなことも多くあります。また、胸が痛くなったために心臓の病気が心配になり、心臓の専門医を受診したのに、「心臓の異常はありません」の一言で片付けられ、次への誘導もないまま診療が打ち切られた、という経験を持つ方もいらっしゃるかと思います。ちなみに、「胸痛」は消化器の病気、「腹痛」は心臓の病気、「動悸」はホルモンの病気の可能性もあります。また、「腰痛」は整形外科の病気であるとはかぎりません。総合診療医の役割は多岐にわたりますが、その中でも、患者さんの幅広い訴えに耳を傾け、そして診察をし、自身で治療可能なものはしっかりと治療し、そうでない場合は責任を持って他科に紹介をすることが最も重要な役割のひとつと考えています。